特恵関税制度とは?タイ・中国・マレーシアなどが卒業見込み

特恵関税制度アイキャッチ

以前、別の記事『原産地証明書 Form A(フォームA)とは?関税を無税にする』の中で、一般の関税率よりも低い関税率、もしくは関税が無税になる、「特恵関税制度」について触れました。

僕が関わっている輸入案件で、タイからの輸入品がこの制度を利用して無税となっていたのですが、タイが一定の経済発展を遂げたとみなされ、2019年度からこの制度の適用を受けられなくなる見込みとなりました。

今回は、この「特恵関税制度」と今後の制度の見直しについてご紹介していきたいと思います。


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特恵関税制度とは?

この制度は、開発途上国や地域を原産地とする特定の輸入品において、一般の関税率よりも低い税率を適用することで、開発途上国や地域における輸出所得の増大と、工業化の推進を図ることで経済発展を支援しようとする制度となっています。

日本における特恵関税制度は1971年から実施されており、法令により適用を受けることができる国と地域、そして対象品目や関税率が定められています。

特恵関税を適用する品目と関税率は農水産品と鉱工業品に分かれて定められています。

農水産品は一部の品目が対象となり、関税率は品目により異なります。

一方、鉱工業品は一部の例外を除いた全ての品目が対象となり、関税率は原則として無税となります。

特恵関税の対象となる国

特恵関税の対象となる国のことを「特恵受益国」と呼び、2017年4月現在で、135の国と5つの地域の、合計140の国と地域が対象となっています。

この140の国と地域のうち、47か国の後発開発途上国(LDC:Least Developed Country)からの輸入に関しては、ほぼすべての品目が無税となります。

この47か国に対する関税は、「特別特恵関税」と呼ばれており、47か国の多くはアフリカ大陸の国々となっています。

特恵関税または特別特恵関税の適用を受けるためには、原則として「一般特恵制度原産地証明書(様式A 通称:Form A)」が必要となります。

特恵関税制度の卒業と適用除外

そもそも特恵関税制度は、開発途上国の経済発展を支援することが目的となっています。

そのため、一定のレベルまで経済発展が達成されたとみなされた段階で、制度の対象外となり、これを「卒業」と呼んでいます。

卒業にも2種類あり、部分卒業と全面卒業に分かれています。

全面卒業は、すべての輸入品目について特恵関税制度から除外され、部分卒業は国際競争力の高い、一部の輸入品目についてのみ、特恵関税制度の対象外となることを言います。


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特恵関税制度の卒業基準

特恵関税制度の特恵受益国から除外するかどうかの基準は、2018年度から見直しが入ります。

判断基準には、国際復興開発銀行が公表している、1人当たりの国民総所得の統計が用いられています。

12,476ドル以上:「高所得国」
4,036ドル~12,475ドル:「高中所得国」
1,026ドル~4,035ドル:「低中所得国」
1,025ドル以下:「低所得国」

卒業の基準

①上記統計の「高所得国」に該当していること。

②3年連続で、上記統計の「高中所得国」に該当し、なおかつ、WTO統計において世界の総輸出額に占める当該国の輸出額の割合が1%以上であること。

制度の基準見直しによって、②の項目が追加になりました。

2019年度に卒業する見込みの国

基準の見直しによって、2019年度には、マレーシア・ブラジル・メキシコ・中国・タイの5か国が特恵受益国から除外となる予定です。

まとめ

特恵関税制度のおかげで、輸入者にとっては大きな恩恵があったわけですが、制度基準の見直しによって一般の関税率に戻ってしまいます。

僕の商社でもタイからの輸入品については今後価格を見直す必要が出てきそうです。


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