みなさんは貿易の輸出入において必要となってくる場合がある、「原産地証明書」というものをご存知でしょうか?
今回はこの「原産地証明書」についてお話をさせていただきたいと思います。
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原産地証明書とは
取引の対象となっている物品が特定国・特定地域において生産、または加工されたことを証明する書類のことです。
英語では、「Certificate of Origin」と呼ばれています。
原産地証明書の種類
原産地証明書は、輸出のときに必要になる場合と、輸入のときに必要になる場合の2パターンがあります。
日本から物品を輸出するときに使用する場合
①非特恵原産地証明書
この原産地証明書は、日本から物品を輸出するときに物品の受け入れ側である、輸入国の法律・規則に基づく要請があった場合と、契約や信用状で原産地証明書の提出指定がある場合に、日本側で発行し、相手側に提出します。
客観的に日本で生産されたものであるということを証明するために使用されます。
発行機関は日本各地域にある商工会議所となります。
②特定原産地証明書
これは日本が経済連携協定(EPA・Economic Partnership Agreement)を締結している国との貿易において、日本から輸出される物品がEPAに基づく原産資格を満たしていることを証明する証明書です。
この証明書があれば、相手国の税関でEPA税率(通常の関税率よりも優遇された関税率)の適用を受けられます。
発行機関は日本商工会議所となり、協定ごとに異なる原産地規則に照らし合わせ、それぞれの協定に基づく様式で原産地証明書が発給されます。
日本では2017年9月現在、以下の国・地域と経済連携協定を締結しています。
シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル
日本に物品を輸入するときに使用する場合
①一般特恵制度原産地証明書様式A
海外から物品を日本に輸入するときに、一般特恵関税制度の適用を受ける場合に利用されるのが、通称「Form A(フォームA)」と呼ばれる原産地証明書になります。
ここで一般特恵関税制度を簡単にご説明しますと、開発途上国の輸出所得の増大と工業化・経済発展を図るために、開発途上国から輸入される一定の物品に対し、一般の関税率よりも低い関税率、または関税を無税にする制度のことを言います。
原産地証明書 Form A は、輸出国側の各発給機関で発行を受け、日本の税関に提出すれば、一般特恵関税の適用を受けることができます。
ただし通関の際には、証明書の原本が必要となり、基本的に物品が輸入国から日本に到着する前までに税関に提出する必要があります。
※特恵関税制度については別記事でご紹介しています。(特恵関税制度とは?タイ・中国・マレーシアなどが卒業見込み)
僕が実際に経験した原産地証明書 Form A を使った輸入案件
僕はこれまでに一般特恵関税制度を利用した輸入を何回か経験しています。
利用した制度の対象国は、フィリピンとタイです。
僕が経験したケースはいずれも取引契約先はアメリカの会社で、生産工場がそれぞれフィリピンとタイにあるといった、3か国間の取引形態でした。
通常、原産地証明書 Form A の「輸出者」欄には、製品を生産する会社名が記載されます。
「輸入者」欄には日本の自分の会社名が記載されます。
しかし特に何もしないと、取引契約先の会社名は原産地証明書上に記載されないのです。
そのため、3か国間の会社がからむ取引で、この制度を利用するときに気をつけなければならないのは、原産地証明書上で、輸出者である生産工場の会社名と、取引契約先の会社名を紐づける記載をしなければならないということです。
フィリピンの原産地証明書の書式では「Remarks」欄があるので、「日本の自社とアメリカの会社間で取引契約を交わし、アメリカの会社が生産を委託しているフィリピンの製造会社の工場から日本に向けて製品を輸出するものである」ことを明記できます。
しかしタイの書式では「Remarks」欄がないので、「輸出者」欄に生産工場とアメリカの会社との関係性を但し書きして対応しています。
各国で書式が異なるので対応が大変なのですが、それ以上に大変なのが製品が日本に到着するまでに現地工場側に原産地証明書を取得してもらうのが一番骨の折れる仕事です。
何せ輸入時の関税が無税になるのですから、間に合わなかった場合には仕入れコストが大きく異なってきてしまいますので、毎回原本を通関時までに入手できるよう、必死で事前に手配を行っています。
まとめ
今回は原産地証明書というちょっと専門的なお話でした。
輸入時の一般特恵関税制度は、日本側から見ると「関税が免除されるお得な制度」となってしまいますが、あくまで輸出国側の経済発展のためにある制度だということを忘れないようにしたいですよね。
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